洋食店での妄想
久しぶりに早く帰ったので、たまにはリッチな料理でも・・・と、
とあるビルのレストラン街へと足を運んだ。
彼にとって、レストラン街で食事するのがリッチらしい。
数十店舗の中から選んだのは、普通の洋食店。
見た感じ、客層は会社帰りの社会人が多い。
私はカウンター席に案内され、すぐに注文を済ませた。
カウンターから見える厨房では、若いシェフ達がせっせと働く。
携帯を覗き込み、食事が出るのを待つ。
しばらくすると、僕は自然と厨房の方を向いていた。
「2・・4・・5・・シェフは6人。」
料理人の数を数えてみる。
まぁ妥当なセンでしょう。
「食事を運ぶ人は・・・2人。いや、3人。」
案内役の女性、注文係を含めると、この店で11人が働いている事になる。
「なるほど・・・6-3-2システムだな。」
何故かサッカーのフォーメーションに例える。
6バックとは、かなりディフェンシブだ。
『スープお待たせしました。』と店員さん。
すっかり腹を空かせた私は、内心イエローカードを出す所だった。
しかし、一口飲むと、出しかけたイエローを取り下げてしまう。
「素直に美味しい。」
目の前では、料理運搬役の店員が目まぐるしく移動する。
厨房の奥で作られた料理が遠くの席へ運ばれていく。
「大胆なサイドチェンジ。駒野・・・いや、加地さんレベルだな。」
いいんだか悪いんだか分からない例えである。
この後に登場するメインディッシュは、「鶏肉のカリカリ焼き」。
ライス付きで千円を超えるとは、私もかなり奮発したものだ。
だが「鶏肉のカリカリ焼き」は、まだベンチを暖めている。
早くピッチに呼んでくれ。
私はゴールキーパーの心境で待ち構える。
右のシェフがシュート?
それとも左シェフからクロスが上がる?
今、どのシェフがカリカリ焼きを作っているんだ??
何処からでも来い。
俺はグレートゴールキーパーだ!!
とそこへ
『お待たせしましたー。鶏肉のカリカリ焼きとライスでーす』
ゴーーール!!
私の背後から、あっさり料理が置かれる。
「シャドーストライカーか・・・。」
鶏肉を口にするたび、いつぞやのヴェルディ並みに失点を重ねたのは言うまでもありません。